永年ご愛用戴いております「登録・正本」の庖刀の真髄を語るには、創業者、初代・巳之助まで遡らなければなりません。
巳之助は、「一つの仕事に進むからには、どうでもその仕事の上で、後々まで名の残るような人間になりたい」が、口癖であったといわれております。
初代は、４７才で没するまで、東奔西走、修行に努め、命がけで築き上げた「正本」の庖刀造り技術と品質管理は、以後六代に亙って、それぞれが、研鑽を積み重ね、徒らに、関西をして、庖刀に名をなさしめずと謂う念願をここに達し、他の追随を許さない高品質の庖刀となったのであります。登録・正本の伝統は、一振りの庖刀の中に、こうして脈々と生き続け、料理を作る人を通して、その料理を召し上がる方々の心にまで届いているものと信じております。
世は、挙げてインスタント時代となっても、時移り、社会的異変が訪れても、美味いものを食べたいと謂う欲望は、人が生きている限り続くでしょう。
美味しい料理は、秀れた料理人の知識と感性から生まれるものです。
そして、秀れた料理人は、秀れた道具を選ぶものです。
「登録・正本」の数々の庖刀は永い歴史に培われ、育まれて参りました粒整いの逸品です、「伝統の一振り」を、末永くご愛用くださいますようお願い申し上げます。
株式会社 正本総本店 六代目 正本 敬白
